暇だったので、つらつらと

主に私の応援するサッカーチーム「清水エスパルス」に関する適当な感想を書いていく(予定の)ブログです。そのほか気になったことがあれば書きます。

2020年2月23日(日)vsFC東京

掴みかけた希望

後半2分。西澤健太からのパスを、CBの間で受け抜け出したティーラシンが冷静にゴールに流しこみ、エスパルスが先制する。
タイの英雄がもたらした貴重な先制点に、会場のボルテージが一気に高まった。
「間違いない、今日はいける。」
そう感じられるほど、ここまでのエスパルスの試合運びは見事だった。

前半ゴールこそ奪うことはできなかったが、幾度となく繰り返されるサイド攻撃がFC東京の守備陣を苦しめ、最終ラインからの丁寧なビルドアップや素早いネガティブトランジションからのボール奪取が、エスパルスのボール支配率を高めていた。
「試合の流れはエスパルスが支配している」
間違いなくそういい切れるほど、ここまでのエスパルスFC東京を圧倒していた。

ちょうど一週間前、ルヴァン杯川崎フロンターレ戦では決して褒められる完成度ではなかっただけに、誰もが今年のエスパルスのスタイルの完成には大きな時間がかかることを覚悟していた。
だからこそ、今日のエスパルスには新たなスタイルの構築への希望の光が見えていたのである。

「このままいけば、あと少しで掴める」
しかし、大きな光に照らされる物体の背後にはまた、大きな影も生まれることを忘れてはいけなかった。

迎えた後半29分。無情なホイッスルが、ピッチに鳴り響く。
立田悠悟が懸命に足を出したプレーに対し、主審が指差したその先は、ペナルティアーク。
キッカーのディエゴ・オリヴェイラが冷静にゴールを決めると、エスパルスに不穏な空気が流れ始める。
すると、今季悲願のリーグ初制覇を目指す東京の青赤軍団は、エスパルスに生まれた隙を決して見逃さなかった。

後半35分、鮮やかなカウンターからブラジル人トリオの見事な連携でゴールを陥れると、47分にはダメ押しのPKを奪う。歓喜に沸くFC東京の選手たちとは対照的に、がっくりと肩を落としてしまうエスパルス
わずか15分という時間は、エスパルスから希望を奪うには十分過ぎる時間だったのだろうか?
自身の背後にできた影に引き摺り込まれ、エスパルスが掴みかけていたはずの希望は、その手から遠のいていくのであった。

試合結果の分析

 どうも、ききみみ頭巾です。ブログを始めてから1ヶ月以上にして、ようやく2回目の投稿となりました。
 シーズンオフでは様々な動きがあったエスパルスではありますが、新規加入選手の噂が多く飛び交う中、記事投稿のタイミングを見失い、「ま、いっか」と開き直ってのんびり過ごしておりました。
 当ブログは今後もこの緩いスタイルの構築を目指していこうと思います。

 ということで、今回はJリーグ開幕戦のFC東京戦を振り返ってみます。
 振り返ると言っても大した分析はできませんので、得点シーンを主にエスパルスの試合を総括していきたいと思います。

振り返る前に

 今年、エスパルスはピーター・クラモフスキー監督が就任しました。就任会見の中でクラモフスキー監督は“アタッキングフットボール”を標榜したわけですが、監督自身も仰っていた通り、基本的には横浜Fマリノスのサッカーに近しいものと考えて良いようです。
 私はマリノスのサッカーを言語化できるほど優れた分析はできないので、はっきりと言いきることはできませんが、少なくともクラモフスキー監督の言葉から推測するに「ボールの保持を前提に、自分たちのアクションでゲームの主導権を握るサッカー」と 考えて良さそうです。
 “ボールの保持”とは単なるポゼッションのみに限定されるわけではなく、ボールをいかに速く奪い返し自分たちのポゼッションにつなげるかという守備を含めた概念だと思いますので、エスパルスのプレー原則の核となる考え方なのかなーとも思います。
 また、“自分たちのアクションで主導権を握る“という部分については、能動的なポジショニングに応じたボールの動かし方を通じて、相手守備陣を常に受け身にさせることを目指しているのではないでしょうか。
 いずれにせよ今年のエスパルスは、攻撃することを前提にプレーの仕方を選択していくと思いますので、そこに注目して試合を振り返っていこうと思います。

基本フォーメーション

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試合開始直後のフォーメーション
青が清水エスパルス(4−2−1−3)。赤がFC東京(4−1−2−3)です。

得点シーン

【後半2分】

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ティーラシン選手の見事なポジショニング
 CBの間にポジショニングしたティーラシン選手も見事だったと思いますが、立田選手がディエゴ・オリヴェイラ選手を早めに潰しボールを奪って攻撃に転じることができた時点で、狙い通りだったのではないかと思います。また、素早くカウンターに転じたことでFC東京がブロックを組めていなかったこと、渡辺選手との距離感が空いているにもかかわらず森重選手が無理なパスカットに挑戦してくれたことが重なり、驚く程容易に決定機に繋がりましたね。今季はこういったプレーがもっと増えてくるんではないでしょうか。

失点シーン

【後半32分】

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奥井選手の背後に大きなスペース
 奥井選手のパスをアダイウトン選手が引っ掛けたところからカウンターを受けてしまっています。橋本選手がダイレクトでディエゴ・オリヴェイラ選手にロブパスを供給したことで、奥井選手の背後にできていた大きなスペースをレアンドロ選手に突かれてしまいました。結果的に立田選手がPKを献上することになってしまいましたが、ディエゴ・選手に競り負け、レアンドロ選手に繋がれてしまった時点で失敗だったのではないでしょうか。

【後半35分】
 このシーンはリスク管理が上手く機能しなかったことと、ルヴァン杯の川崎戦でも散見されたSBとCBの距離感の問題が表面化してしまったシーンではないかと思います。リスク管理という点では、カウンターを受ける直前の場面まで遡る必要があります。

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カウンターを受ける直前
 カウンターを受ける直前のプレーを振り返ってみると、左サイドをドリブルで駆け上がった中村選手からパスを受けた西澤選手が中に仕掛けクロスを供給しています。この時、中村選手はドリブル後左サイドに流れていたため、中央のボランチは西村選手1枚になっていました。では西村選手はこの時どこにいたかと言いますと、SBの石毛選手が開けたスペースをカバーしています。これに関しては「??」となられる方もいらっしゃるのではないかと思いますが、石毛選手はクロスがブロックされバイタルエリア付近に落ちたときに備えてポジションを上げていました。そのため、石毛選手があけたスペースは西村選手がケアしていたわけです。
 すると、今度はどのスペースが空くかと言いますと、中央のボランチのスペースです。中村選手もいないためぽっかりと大きなスペースが空いてしまいます。西村選手が中央を空けてしまっている以上、右SBの奥井選手が中に絞ってそのスペースをケアしても良さそうですが、奥井選手は最終ラインに入って守備を固めていました。おそらくその理由は、アダイウトン選手が残っていたからではないかと思います。ヴァウド選手に任せても良さそうでしたが、1失点目で自身が空けた背後のスペースを突かれていたことから、同じ失敗は繰り返したくなかったのかもしれませんね。
 いずれにせよ、最終的に森重選手のクリアボールが石毛選手の狙っていた位置に落ちてきたところまでは良かったのですが、田川選手と迫り合いになった結果アルトゥール・シルバ選手の元へボールがこぼれ、アルトゥール選手にボランチのスペースを狙っていたレアンドロ選手へパスを供給されてしまいます。

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最終ラインの守備
 レアンドロ選手に広大なスペースを与えてしまった時点ですでに失敗ではありますが、その後の守り方も良くなかったのではないかと思います。レアンドロ選手がボールを持つと同時に、アダイウトン選手はタッチライン側まで開き幅をとりました。その結果、奥井選手はサイドに引っ張り出されます。この時ヴァウド選手が中央で待ち構えてしまったため、奥井選手とヴァウド選手の間に大きなスペースが空いしまいました。
 このスペースを見逃さなかったFC東京の攻撃陣は、まずレアンドロ選手が中央寄りにドリブルを仕掛け、ヴァウド選手を釘付けにします。そしてディエゴ・オリヴェイラ選手がそのスペースにダイアゴナルランで侵入し、今度は逆サイドからわずかにタインミングを外してアダイウトン選手がダイアゴナルランで侵入してきました。ディエゴ選手がスペースに入るタイミングでレアンドロ選手からパスが供給され、最後は完全に混乱したエスパルス守備陣を嘲笑うかのようにディエゴ選手からアダイウトン選手にラストパスが通り、ゴールを破られてしまいました。
 この場面はなかなか守るのが難しいとは思いますが、奥井選手が思い切って中に絞った方がよかったのではないかとも思います。というのも、ヴァウド選手だけがスライドすることで立田選手との間を空けるわけにはいきませんし、立田選手も共にスライドしたとしても、今度は立田選手の横にできてしまうスペースを使われてしまうでしょう。だからこそ、奥井選手が中に絞ることで、中央を固めることが先決だったのではないかと思います(まぁ、その場合はアダイウトン選手が左サイドのスペースを容赦なくついてくると思いますので、それはそれで難しい対応になったとは思いますが・・・)。
 以上この失点シーンを今後どのように対応していくかということについては、エスパルスの大きな課題になると言えそうです。

【後半47分】
 奥井選手のパスミスを奪われてしまいました。最後は立田選手がPKを与えてしまっていますが、カードが出なかったことだけは幸運に思えます。こういったミスはなるべく減らしていきたいですね。

総括

 以上、得点シーンと失点シーンを振り返ってみました。選手たちも試合後に語っていたように、失点するまではしっかりと試合の主導権を握ることはできていたと思います。ただ、失点したことでメンタル的に下を向いてしまったのか、体力的に限界が来ていたのかはっきりとはしませんが、後半30分以降の試合運びには課題が残る形となっていました。
 この試合で勝利することができれば、選手たちにとっても大きな自信につながった可能性が高いだけに非常に悔しい思いがありますが、後半30分までは自分たちの目指すサッカーの形が通用するとわかっただけでも大きな収穫ではないでしょうか?目指すべきサッカーの土台が固まりつつある中、1つ1つ浮かび上がる課題に前向きに取り組んで行けば勝利を手にするその日も決して遠くはないと思います(もちろん、そのディティールのクオリティを上げる作業がとても難しいわけではありますが)。
 とにかく、これほど応援しがいのあるサッカーも無いと思いますので、私もなるべく前向きに応援できたら良いなーと思います。ただ、目標は高く持って欲しいです。“マリノスのサッカー”ではなく、マリノスのサッカーをも凌駕する“エスパルスのサッカー”、そんなサッカーを見せてくれる日を心待ちにしています。